人が変わらない理由

仕事柄、企業の研修担当の方々と

お話しする機会が多いのですが、

良くお聞きするフレーズがあります。

それは、

「研修の時は良かったんだけれど・・・・」と言うものです。


研修に参加している時は

「良い話を聞けたし、

同じ立場の仲間ともいろんな話ができて

頑張ろうという気持ちになった」

はずの参加者が、


職場に戻るとあっという間に

元に戻ってしまうという現象です。



これは、私たち人間が自己防衛本能を持っており、

「変化を嫌う」性質がある事が大きいからであると

考えられていますが、




今回はもう少し詳しく考えてみようと思います。

以下が私なりに考えた「人が変わらない理由」です。



・現状によって、得ている利益(楽、安心など)を手放せない

・ガッカリリスク(新しい事がうまくいかない場合の事を
考えてしまう)を誇大に考える

・一、二回試して辞めてしまう(やってみてうまくいかなかったら、すぐにやめてしまう)

・現状何とかなっている(問題の先延ばし)

・危機感が弱い(変わらない事によるリスクを考えない)

・面倒くさい、良くなりたいという欲求が弱い(今のままで良い)

・どこかでラッキーを待っている(努力より運に期待、他力本願)

・孤独である



全てが「独立している要素」ではなく、

関連している事なのですが、



この中で特に今回取り上げたいのは「孤独」についてです。



それは、今までにあまり着目してこなかった視点であり、

実は想像以上に大きな要素ではないか?と

考えるからです。





さらに、人が「変わる」上での「障害」は非常に強力であり、

「一人でなんとかしろ‼」と言うのは

少々乱暴かなとも思います。




なぜなら、研修で学んだ「新しい知識やスキル」に対し、

参加者の心の中に渦巻くものは、




必要だと思わない、思いたくない

必要だと思うがやりたくない

必要だと思うし、やりたいが、踏ん切りがつかない

やっても期待通りにいかない

やり始め、続けてはいるが苦しい





というように

学んだことを自分の武器にできるようになるまで

何層にも障害があり、



それを乗り越えるのは、

なかなかはハードな事だからです。



したがって、人が変容するためには助けが必要であり、

応援し続けてゆく事が大切というのが私の考えです。



私の研修に参加してくれるマネージャー達は

リーダーでありながらも同時に

「部下」でもあります。




なので、本来は上長が応援してあげることが望ましいのですが、

上に行けば行くほど、自分でなんとかするのが当たり前という

不文律があり、マネージャー達は孤独な戦いを強いられます。




さらに、プレイヤーとしての責任も大きい為、

精神的にも時間的にも余裕を持てません。



だから、研修の時は一時的に

やる気になっても





いざ実行に移そうとすると「苦しく」なって

チャレンジを始められない、





始めても続けられないという状況になってしまうわけです。





そんな苦しそうな、つまらなそうな上司を見たら、

部下は「マネージャー」になりたいと

思わなくなりますし、




「同情」はしても「尊敬」はしなくなります。

これは、会社の未来を考えても


徐々に深刻な問題になって行くと思います。



ここまで会社での話をしましたが、

これは、会社の中だけでなく、

実は学校や部活、家庭でも同じ。




私は日本社会全体に「応援」が足りず、

変化と成長を鈍らせているように思います。



なので、私の研修プログラムは

基本的に単発ではなく、



伴走コーチングをセットする形でご提案しています。



つまり、私がマネージャーを応援するという事です。



一人でも自分の努力プロセスを

見て続けてくれる人が居れば、



やる気も変わってきますし、

ましてや、コーチとしてのサポートもするわけですから、



単発の研修で終わるよりもはるかに

意識や行動が変わる人が

増えてゆくはずです。



ただし、先ほども言いましたが、

一番効果があるのは上長の応援です。



マネージャーなんだから、

ベテランなんだから、





「やらなくてはいけない」

「できて当たり前」と言う風に




常日頃、厳しく接してしまいがちですが、






一番必要なのは、

いつか変容すると思って、見守り、

応援し続ける事だと思います。






これは、叱責したり、指摘したり、指導するよりも

はるかに「キツい」事ですが、



「キツい」からこそ、続けることが出来たら、

大きな果実が実るのではないでしょうか。



義務感、責任感、使命感で

危機意識をあおるよりも

「応援」を前面に出す。




日本企業の経営者の方、重役の方々に

是非、試していただきたい事です。

「専門知識」を凌駕する「リーダー能力」の可能性




昨今、就職を控える学生の「専門職志向」が

強くなってきたと言われています。

また、こういう傾向に合わせて人材配置をしてゆこうという

企業も増えているそうです。



この背景には若者の「就職」と言うものに対する

考え方の変化があります。




産労総合研究所行った調査では、入社に際し、



45%が「できるだけ永く、その会社に勤めたい」と答えたのに対し、


それ以外は滞在予定年数に違いはあっても

「転職を考えている」が55%という結果になったそうです。



企業に一生務めるわけではないので、

専門性を磨いてゆきたいと考える学生が増えているという事ですが、




また、それと反比例するように、

会社でマネジメントをする立場につきたいと考える人は

25%ほどになっており、年々下降の一途だそうです。


割に合わない管理職になるよりも

スペシャリストの方が将来明るいと考えているのかもしれません。


しかし、本当にそうなのか?と言うと私自身は疑問に思っています。



自分の専門分野を作ってゆく事は良い事であると思いますが、

今後もかつてないスピードで



様々なイノベーションが起こってくることが予測される中、

「果たしてその専門性は価値として残ってゆくでしょうか?」と

いう事も考えて欲しいと思っています。




技術の進歩は加速度的に早くなってきていますし、

それに伴い、必要な「知識」もどんどん変わり、増えてゆきます。





また、それと逆行して人間は加齢によって、

パフォーマンスの低下も起こってきます。




「一つの専門性」で勝負できる人は

ほんの一握りになるのではないかと思いますし、




そういう意味で「マネジメント力」を二つ目の大きな武器、

いや最終的には自身を助ける

「必殺技」にしていただきたいというのが私の思いです。





なぜなら、「人間関係にまつわる事」は

人類に「集団」と言うものが形成されてから、「不変」であり、

間違いなく未来永劫続いてゆくからです。




そして、さらに今後は日本でもジョブ型雇用が増えてゆく事により、

「マネジメント能力」も専門化してゆくのではないかと考えられます。




今までの日本のように「マネジメント」を

プレイヤーとしてのキャリアの延長線上として





考えるのではなく、独立した専門性の高い能力として

認められてゆくという事です。



業種関係なく、

チームのパフォーマンスを向上させる事ができる能力は、

多少のマイナーチェンジは必要であったとしてもニーズの多い、

「魅力的な能力」となって行くのではないでしょうか。





それを表す一つの例として、ご紹介したいのが、

以前、私のリーダー研修に参加されたある大手金属企業の

課長さんのお話です。




その課長さんは、研修後、「学んだことを職場で試してやろう」と

意気込んで戻ったら、すぐに人事異動があり、

今まで自分がやってきた事業とは関連性のない

子会社に出向することになったそうです。





最初は「マジか!!!」と思ったそうですが、



知らなかったからこそ、

開き直って部下に対し、

「色々教えて!!」と言う謙虚な姿勢で接し、





部下の考えや話をよく聞いた上で物事を進めるようにした結果、

驚くべきことにチームの業績は飛躍的に伸び、

しまいには、前任リーダーの時と比較して

約20%も売り上げがアップしたそうです。



因みに前任リーダーは業界20年のベテランで

「良く知っている」為、自分の考えで指示を出し、

マネジメントを行っていました。



「自分が良く知っている、できる」よりも

業界の事は知らなくても、部下の活かし方に長けている方が

成果を出せた良い例です。


全てこのお話のようにはいかないかもしれませんが、

「リーダーとしての能力」を高める事は

「業務の専門性」を超える可能性があります。



今は「大変で割に合わない」と思っている事が、

自分のかかわり方次第で

自分を楽にし、チームメンバーも、ひいては会社も

ハッピーにできるのです。



さらに、定年後も「時間」ではなく「自分の価値」を

売ることができます。



これから、弊社では

年末にかけてプレイングマネージャー向け研修が

増えてゆきます。



一人でも多くの方に「リーダー能力」の魅力を伝えつつ、

私自身も学ぶ姿勢で

謙虚に貪欲に臨んでゆきたいと思います。

キンコーズ渡辺社長が語ったコーチングの真髄

以前お伝えした通り、

オンラインイベントでキンコーズの渡辺社長と対談しました。




渡辺社長は一年間、コーチングを受けた後、

現在、ご自身もコーチングを学んでおられ、
幹部社員との定期的な1on1によって、
会社の風土を自ら変えてゆく活動をされています。
なぜ、渡辺社長がここまで

コーチングに惹かれていったのかという事ですが、


コーチングを受けてみて、

コーチングの真髄に触れることができたからだそうです。





その真髄とは何かというと「自分をエグル」という事だそうです。




「自分をエグル」とは、もしかして「ドM」?
と思われたかもしれませんが(私だけか?)、そうではなく、
自分自身と「とことん向き合う」という意味です。




改めて、「自分をエグル」という言葉をかみしめてみると、

「コーチング」の核心を突く、素晴らしい表現だなと感じました。



一般的に経営者の方々にコーチングをお勧めした時に還ってくるのは、
「何をしてくれるの?」または「何をされるの?」


もっと言うと「なんで、私がコーチをされなきゃいけないの?」
と言う反応です。



これは、従来のスポーツコーチ等による上下関係のイメージが強いのと
「コーチング」を言葉で説明するのが難しいので
誤解されやすいという事が原因だと思われます。



また、何をやるかは理解できたとして、

自分で自分をエグルのに
なんでわざわざ他人にお金と時間を投資しなくてはならないの?というのも
良く抱かれる疑問かもしれません。




ですがここに「コーチ」をつけることの意味があります。




どういうことかと言うと、

自分だけでは自分をエグレないからです。


と言うのは、私たちにはそれぞれ、考え方や思い方に「癖」があり、
何も刺激がないと一定の枠の中で思考するようになり、

固定しがちになるからです。
そして、その「癖」は自分を無意識に正当化する「癖」であり、
自分を守るための「癖」でもあります。

なので、時折コーチを使って、

本当にそうなのか?なぜなのか?他にはないのか?を
深く掘り返して思考したり、
「ここはどうなの?」「どう考えているの?」

「あなたが相手の立場であったら、どう思うだろうか?」など
視点を変えてもらう事によって、



その人が居る「安心領域」から引きずり出してもらう事で

視野が広がり、今まで「見えていなかった」、
あるいは、「見ようとしていなかった」発見があり、

結果として最適な判断ができるようになるのです。



勿論、セルフコーチングと言って、

自分で自分をコーチすることもそれはそれで有効ですが、

やはり、限界があります。




なぜなら、先ほどお話しした通り、

人間には自己防衛本能があり、





本当の意味で「自分が見失っていたもの」
「見たくないもの」に到達することが不可能に近いからです。




したがって、客観者であるコーチがエグル材料を提供することは、

一人ではたどり着けない
答えを導くうえで大きな意味があります。





しかし、経営者の方々は総じて多忙です。
とてもじゃないけれど、

コーチングのために時間は取れないよというのも理解できますが、





多少、無理してでも

「定期的に立ち止まった方が結果として早くなる」事も多く、
新たなフェーズに向かう上では




「コーチを使う」という事にチャレンジをしてみる価値は

十二分に「ある」のではないでしょうか?



ちなみに、渡辺社長ですが、

次にどんなコーチをつけたいか?という質問に対して
「子供も良いかも」とおっしゃってました。



子供なのでコーチングのスキルはないけれど
曇りのない目で見て、素朴に感じた疑問をぶつけられたら、
何か、新しい気づきが得られるのではないか?

と思ったそうです。
それを聴いて思い出したのが

以前お聞きした、ソフトバンクの孫さんのお話です。




孫さんはなんとコーチを7人つけていて、
そのうち一人は女子大生コーチだというお話でした。


コーチングの真髄を理解しているからこそ
出てくる発想ですね。



さすがです。