部下の主体性を覚醒させるには⑤

~プレイングマネージャーの育成法~

今日は自信の「揮発性と積立」についてです。



一言で言うと過去の自信は放っておくと消え、

積み立てていかないと減る一方であるという事です。





何か、自分が期待した通りの成果が上がった時、

私たちは「自信」を感じる事が出来ます。





ただし、時間経過とともにその自信は、

過去のものになって行きます。




だからこそ、自信が減らないよう、

増えてゆくように積み立てをしてゆく必要があります。





これに気が付いたのは、

ある社労士さんのコーチをした時です。





その方は、「自分に自信がないので、自信をつけたい」というのが

コーチングのテーマでした。






ただ、経歴を聴くと

子供のころから、受験では第一志望に受かり、





就職においても「希望通り」大手航空会社のCAになり、

さらに、一念発起してチャレンジした

「社労士」の試験にも一発で合格。






「それでなんで自信がないの?うそでしょ‼」と

突っ込みたくなったのですが、





自信は主観であり、今はどうか?が基準になるので

「なぜ、そう思うのか?」からセッションを始めてゆきました。






そんな中、そのクライアントが言っていたのは、

試験の類は「取り組むべき事」が明確で




後は、実行すればよかったけれど

今は「何をどうして良いのかわからない」というのです。





ここも以前お伝えした「錯誤」があるのですが、

人は「曖昧」だったり、「不明確」な状態だと「不安」になり、

その状態を「自信がない」と認識しがちです。





なのでまず、「自信とは何か?」「今の状態はどうか?」という事を

対話の中で明確にして行きながら、この錯誤に気づいてもらい、

自信の積み立てに取り組んでゆきました。






具体的には、「望んでいる状態」になるまでの

プロセスを仮説として決めて、





取り組みを具体的にし、その進捗を追いながら、

一歩一歩やった事と気づき、得た事を整理してゆく事です。





こういう事をセッションごとに繰り返して行った結果、

半年経過した頃には





そのクライアントは

自分の行動に手応えを感じられるようになりました。



それに伴い、コーチングのテーマは「自信をつける」から

一歩前進した「自分のスタイルを確立する」に変ったのです。






自信を積み立ててゆくとはこういう事で

取り組みを明確にし、行動の意味をプラス化してゆく事なのです。






私たちが日々行っている行動は、成果に繋がらない事も多く、

それだけ見ていると「自己否定」や「自信喪失」しがちです。





でも、仮説を修正しながら、取り組みを続けてゆく事で

期待以上の成果に繋がる事もあります。





大切なのは、行動を止めない事。





プレイングマネージャーが部下に接する時も

やる事を一緒になって明確にしてあげ、





すぐには成果に繋がらないようなことも

取り組みの中に意味を見出し、





一緒に確認をして上げ続ける事で

部下は、「自信」を獲得できます。





「自信の揮発性と積立」。





「部下の自信を育む事」は

今やプレイングマネージャーにとって




最も「重要な役割」と言っても良いかもしれません。




今日は自信の「揮発性と積立」についてお話ししました。





次回は今日の内容に関連した

「自信の能動的獲得と受動的獲得」について

お話ししたいと思います。

部下の主体性を覚醒させるには④

今日は「自信は部分的で良い」についてお話します。



部分的で良いというのは「結果」のみに囚われることなく、

プロセスで得たものを大切にしようという意味です。




この話をしたいと思ったのは、

研修等を通じて、若い世代の人達に接してきた中で


上手くいかなかった、たったひとつの出来事で

自分を全否定するような思考を持った方が

多いと感じたからです。



何か一つ上手くいかなかったとしても

それイコール、その人の存在そのものを否定するものではないし、

自信を失うべきではありません。



でも、何かあるとすぐ自分を駄目であると思ったり、

自信を失うという人が多く、


これが、成長を鈍化させるひとつの要因であると

私は考えています。


永い間、肯定されるよりも

否定をされる経験が多かった結果によって

このような状況を招いているのではないかと思いますが、




人材の育成を考える上で「この問題」について真剣に考えないと

どんなに素晴らしい教育を提供しても

付け焼刃で終わってしまいます。




なぜなら、チャレンジに対し、上手くいかない事の方が圧倒的に多く、

それでも行動を止めない事が大切だからです。



では、何から考えるか?という事ですが、

まずは、部下の出来た事、気づいた事に上司が目を向ける、

そして、部下の目を向けさせることが大切です。




仮に望んだ成果がなかったとしても

行動した結果、得たことが必ずあるはずです。



私たちは、ついつい上手くいかなかった要因や課題に意識を向け、

ダメだった理由を考え、「反省」をしようとしますが、



こればかりですと何より、モチベーションが上がりませんし、

「自信」の獲得に繋がりません。



例え結果が出なかったとしても行動の中で

気づいた事、わかった事を「意味がある事である」と取り上げ、

積み上げてゆけば

結果以外にも意味を見出すことができ、

「部分的な自信」を獲得してゆく事が出来ます。



 

私たちは、

ダメなところを取り上げ、「反省」するのは、

得意ですが、肯定的に物事を捉えてゆくのは

比較的苦手です。




でも、今私たちに必要なのは「活力」であり、

閉塞感をぶち壊すエネルギーです。




このエネルギーを生み出すためにも

一人一人が「部分的な自信」を積み重ねてゆく事は

とても重要ではないでしょうか?




何事も一所懸命行動すれば

成果に繋がるシンプルな時代ではなくなってきました。

 そろそろ、目先の結果だけに囚われる習慣を手放し、

中長期に物事を考えられる国にしてゆきたいものです。




そのためには、まず日常に「肯定の言葉」を溢れさせてゆく事です。



そして、まず手をかけるべきは「自分」から。



リーダー自らが自身の事を肯定的に捉えるように

日々意識してゆく事です。




そうすれば、自分も効果を実感できると思いますし、

どうやって。部下を肯定すれば良いかがわかってゆきます。




今日は「自信は部分的で良い」についてお話ししました。




次回は自信の「揮発性と積み立て」について

お話ししたいと思います。

部下の主体性を覚醒させるには③

今日は「自信の特性」についてお話します。

それは、特性がわかっていないと

部下育成についても取り組むべきことが

理解できないからです。


私が考える「特性」としては以下の通り4つが挙げられます。

❶自信は「主観」である

❷自信は部分的で良い

❸揮発性と積み立て

❹能動的獲得と受動的獲得

まず❶の「自信は主観である」ですが、

これは読んで字のごとく、

自信は「自分がどう思うか?」によって

決まると言う事です。




これは前回の「成長実感」にも関係する事なのですが、

同じ状況にあったとしても




人によって、受け取り方が違い、

出来事や物事のポジティブな一面を見る習慣があるか




それとも、ない物や得られなかった事など

ネガティブな一面を見るのかによって

「自信」の有無が変わってくるという事です。



どうしても「得られなかった事」もっと言うと

「失敗」から学ぶという意識が強い私達ですが




こういう意識が「自己否定」に繋がり、

「自信がない」と感じる状況にも繋がっているという事を

私たちは真剣に考える必要があります。






そして更に言うと、上手くいかなかった要因は「分析」をしますが、

上手くいった事については、それほど「分析」をしません。




実は上手くいかなかった事よりも

上手くいった事の方に「成長の糧」がたくさんありますし、




何よりも自分が成し遂げた事に対する「根拠」を曖昧にせず、

財産や武器にすることができます。





これはスポーツの世界でもよく見られることで

欧米のトップコーチは、




選手のポジティブな面に目を向けさせ、

なぜ上手くいったのか?できたのか?を

認識、理解させて行くアプローチをします。






私が好きなTV番組で

NHKの「奇跡のレッスン」という番組があるのですが、




欧米のトップコーチが日本の中学生達に

「1週間」コーチをする事で

どんな変化があるのか?を観る内容になっています。



ここでも共通しているのは失敗を指摘して改善するのではなく、




「できた事」「わかった事」「うまくできるようになった事」に

目を向けさせるアプローチをすることです。




例えば、良いプレイがあった時にプレイを止めて、

「今の良かったよ。なんでそうしようとしたの?」と




選手に問いかけるのです。

そうすると選手は「自分の選択」について考え、




自分なりの「答え」を導き出します。



コーチがこういう働きかけを繰り返してゆく事で

選手たちは

自分で出した「答え」の集合体が自信やスキルとなり、

積もり積もってゆくので




同じような場面になった時にいつでも引き出す事ができ、

有効な「再現性のある」プレイ機会が

増えるという事です。





私達は「できる」「わかる」「うまくできるようになる」事に

よって成長を認識できるわけですが、




このように自分の意識を良い所に向けさせ、

自信を育んでゆこうとするのがトップコーチの考え方です。





これは「仕事」にも当てはまる事で

上司も部下も



失敗よりも「できた事」「わかった事」

「うまくできるようになった事」に

に目を向ける習慣が出来れば、




部下は自分を成長させるためのアプローチを

身に付ける事が出来ます。




しかし、現実問題として

「仕事」に前向きになれず、




ただ給料をもらうために仕方なくする事であると部下が考えているとしたら、




「否定」からの改善という従来の「育成」によって

もたらされた結果であると言えるかもしれません。





したがって、私たちが考えるべきことは

私たち自身が自分の行動も含めて、




ポジティブな側面に目を向けてゆく事、

そして、部下や後輩にも目を向けさせてゆく事です。




そのためには、まずリーダー達が

出来ていないことを指摘してすぐ行動を変えさせたいという誘惑と




目先の「対処的成果」を手放す勇気を持つ必要があります。




これは、私たち全員が持っていると言っても良い程

強烈な欲求であり、「習慣」ですが、



結果として「自信喪失」に繋がり、

誰も幸せにしていないという事を

強く認識する必要があります。



今日は「自信は主観」であるという話の中で

「否定からの改善」よりも

ポジティブな面に目を向けてゆくというお話をしました。



次回は、「自信は部分的で良い」についてお話ししたいと思います。

部下の主体性を覚醒させるには②

前回、部下の主体性覚醒には段階があり、



まずは「自信」を育てる事が第一優先課題であると
お伝えしましたが、



「自信」の育成と言う話に入る前に



今日は「自信にまつわる錯誤」について

お話ししたいと思います。



それはこの「錯誤」が「自信の育成」を考える上で

「知っておくべき」最大の障害になるからです。




「錯誤」を取り上げようと考えたきっかけは、

先日、

カンパニーコーチとして関わらせていただいているIT企業で

実施した新人研修です。




研修は参加者にいろんな視点を提供し、考えさせ、

意見を出させることに主眼を置いた内容だったのですが、




その中で「不安」について取り扱った時に

「知らない事が多い」「経験がない」という事と




「自信がない」という事を結び付けて考えている参加者が

多かったのです。




新人ですから、知らない事が多い、
経験がないのは当たり前の事なのに




それに対し、「自信がない」と答えてしまう人が多い事に対し、

私は危機感を覚えました。

これはこの新人たちに限ったことではなく、



「自信がない」ということとその「理由」として挙げている事を

関連付けて考えてしまうという錯誤は



私たちの日常でも良く起こる事です。

だから、まず「部下の自信を育てる」前に

部下が陥りがちな「勘違い」を押さえておきたいと考えました。




そうする事で部下が自信喪失状態に陥った時に

適切な対応ができるようになるからです。



■「結果」が出ない=「自信がない」ではない



本当は関連性がないのに関連付けて考えてしまう事は

私たちの日常でもよく起こります。




例えば、期待通りに結果が出ないと

自信を失ってしまうのもこの類です。




何か行動を起こしたことに対し、期待通りに結果が出ないと

「自分はダメだ、能力がない」と結び付けてしまいがちですが、




「期待した結果が得られない」=「自分はダメだ、能力がない」

ではないのです。



このように短絡的に結びつけてしまうのは

過去私達が受けてきた教育が




大きく影響しているので「根が深い」

問題なのですが、



「行動の結果」と「人格や能力」は

切り離して考えるべきですし、



部下を持つ人は「意識」して切り離す訓練を

する必要があります。



■自信にまつわる錯誤を解く



自信とは「自分を信じるに足る存在である」と認識する感情ですが、




何を持って「自分を信じる」か?について

真剣に考える機会は少ないと思いますし、非常に曖昧です。



したがって、これを明確にする事で

自分を必要以上に卑下する「錯誤」とオサラバできますし、

必要以上に苦しむ部下を救う事が出来ます。




では、何を持って自分を信じるか?ですが、

「結果」のみですと苦しくなります。



なぜかと言うと、結果については

望み通りになる事よりも

ならない事の方が多いからです。



つまり、「結果」は自分でコントロールできません。




勿論「望む結果」が出れば、うれしいですし、

自信を与えてくれるのは間違いありません




しかし、結果を出す事しか、自信を得れないのであれば

自信を持てる機会は非常に少なくなってしまいます。




なので、「結果」以外のところに

自分を信じるに値する要素があるんだという事を



認識する必要がありますし、

上司は部下に対し、認識させる働きかけが必要です。

■何を持って自分を信じるのか?





では、何を持って自分を信じるのか?という事ですが、

私は「成長実感」であると考えています。



言い方を変えると

「結果以外の行動によって得られたもの」に

目を向けてゆくという事です。



行動して得られた事とは「行動を起こしたという事実」や

それによって

「わかった事」「気づいた事」「得た事」です。



つまり、失ったものより、

得たものに目を向けるという事です。



自分の行動が無駄になったと認識することが

「自信喪失」に繋がるわけですから、



決して無駄ではないよ、

やったからこそ、わかった事があるという風に考える事、




また、部下にもそうやって目を向けさせることが

何より大切であると思っています。



成長とは

「わかる」「できる」「うまくできる」が増えてゆく事です。



行動を止めなければ、

「わかる、できる、うまくなる」が加速し、




成長を自覚できれば「自信」も獲得できます。



上司には部下の成長を促進する役目があります。




言い方を変えると「部下の自信を育てる」事です。

結果のみでその人を見るのではなく、




成長に目を向けて、成長を自覚させてあげられる

リーダーが増えれば、



何かにつけて「自信がない」と思ってしまう

部下たちを数多く救う事が出来ます。



結果に囚われず成長に目を向ける習慣創り。



私はこれを企業に根付かせてゆきたいと

考えていますし、

そんなリーダーを数多く育ててゆきたいと

思っています。


次回は、「自信の特性」についてお話します。