研修の生産性を覚醒させるには②

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研修の生産性を高める方法②

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今日は研修の生産性を高める方法の②として



「フォーカスしたアクションプランを作る」について

お話ししたいと思います。



研修による変容が起こらない、続かない理由の

一つはアクションプランの作り方が甘い事です。



どういうことかと言いますと、



アクションプランが曖昧で抽象的な表現にあふれた内容に

なっていると




目的や実行を図る基準がないままスタートすることに

なるのでアクションが続かなくなってしまうのです。




例えばアクションプランに

「チームメンバー全員で定期的にミーティングを行い、

話し合う」という内容を書いたとします。



この場合だと

目的は何か?各回のゴールは何か?いつやるのか?



定期的とは?どのくらい時間かけるのか?手段は?が

明確ではありません。




よく考えればわかる事なのですが、実際私の研修に参加した

プレイングマネージャー達の多くは



こういう内容のアクションプランを作るケースが多いのです。



仮にこの状態で「では、みなさん頑張りましょう!!」と

アクションを進めるとどうなるかと言うと




最初の何回かは実行できたとしても

二回三回と回を重ねてゆくうちに

内容が薄くなります。



なぜなら、「目的」や「やる事」が不明確だからです。




すると、参加者の中で徐々に「ミーティングの優先度」は

下がって行き、




「忙しい」「急用」など理由を挙げて

参加しない者が出てきて、






いつの間にか「忙しければ、他に用があれば、

参加しなくても良い」という

不文律が出来上がります。





かくして、人数が揃わない状態が続いてゆき、

やがて形骸化し、





ついには、全員が業務多忙を理由に

開催されなくなってしまうのです。





なので、アクションプランを組むときには、

このような項目を明確にしておく必要があります。




さら言うと「アクションプランの記入欄を

項目ごとに細かく設定したほうが


より「具体化」のイメージは

つきやすいでしょう。

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■明確化を避ける理由

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ただ、このような明確化の意図と重要性を
事前に説明したとして




研修参加者のアクションプランは劇的に変わるのか?

と言うと



残念ながら、

それでも変わらない方も少なからずいらっしゃいます。




例えば、アクションプランの記入欄に



「いつ?」を記入する欄があったとしても

「今期中」とか「12月中旬までに」という

表現をするのです。




これでは、いつから着手するのか?が曖昧で

だらだらスタートが後ろに伸びてゆく
可能性が高くなります。




なぜ、具体的な内容を!!という

説明をされても




アクションプランの内容は変わらないのでしょう?



それは、具体的に決めるという経験値が低いのと


さらに決定的なのは「ある心理」が働く事です。





ある心理とは「明確にするとやらなくてはならないから、

約束したくない」と言う心理です。



アクションプランは実際に実行し、

変化を起こす事が目的であるはずなのですが、




私たちは「本能的」に変化を避ける傾向があります。



これは私達の「脳」に原因があると考えられています。



変わるということは、

未知の領域に一歩を踏み出すことになり、






踏み出しても期待する変化が起こらなかったり、

現状よりも悪い状態に陥る可能性もあるため、




脳はリスクを避けて、

なるべく現状を維持しようとするわけです。





「ダイエット」や健康増進のための取り組み、

例えば「ジョギング」が続かないのはこのためです。




研修に当てはめて考えると

アクションを明確にしたら、






「絶対新しい行動(変化)をしなくてはならない」ので

リスクを考えると



行動しなくても良い可能性を担保しておきたいのです。




特に私たち日本人は

曖昧な表現をしたがる傾向が強いようで、





組織の意思決定スピードが落ちる要因にもなっています。


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■目的と価値、恩恵を明確にし、

想定できる障害を一歩一歩クリアして行く

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では、変化を嫌う習性がある私達が

どうしたら、新たな行動をし続けてゆけるのか?

という事ですが、


実行することを鮮明にイメージできるまで

具体化にすることは当然の事として





「リスク」よりも「目的」や実現の「価値」「恩恵」に

目を向けてゆく事、





そして、目的実現に至るまでの「障害」を

あらかじめ想定して





「心」と「対応策」を準備しておく事だと思います。





例えば、「メンバーを毎週金曜日16時に集めて

1時間ミーティングをする」でしたら、





当初は「強制感や義務感からくる態度」で

メンバーが臨んでくることは




容易に予想されますし、

また、余計な事を始めようとしているのか?という





「警戒心」「抵抗感」を露にする人もいるかもしれません。




また、「意見を言わない」「とりあえず、賛成する」など

消極的な姿勢も想定されるかもしれませんし、




チームの状況によっては、参加者の誰かが

ミーティングの開催を

「なし崩し」にしようとする事さえあるかもしれません。


でも「障害」を予測できれば、

それに備えて想定問答集のようなものを

準備しておくこともできます。




どうしたら良いか?自分でわからなければ、

仲間や上長に相談して対策を練ることもできるわけです。




ただし、口で言うのは簡単で

こういう障害に立ち向かってゆくには





覚悟と思い、そしてエネルギーが必要になります。




今の状態を作ったのもある「リーダーである自分」であると

覚悟を決めて、進んで行かなくてはなりません。





それでも、一人ぼっちの孤独な闘いは辛く、

長く続けるのは難しいと思います。

なので、一番理想的なのは

上長がサポートしてあげる事です。



「一緒に頑張ってゆこうよ」という伴走する

姿勢を見せる事です。




間違っても、「上から」できていない事を指摘したり、

厳しい事を言うだけの関わり方は




いたずらにプレイングマネージャーを

追い込む結果になってしまうので

絶対に避けるべきです。




上長とプレイングマネージャがうまくいっていない、

信頼関係が弱い場合もあると思いますが、




そういう場合は「外部のサポート」を

活用することをお勧めします。




私の経験上、「利害」のない第三者の方が、

本心を話しやすく、




苦しい胸の内や悩みを話すことによって

元気とやる気が回復した例は少なくありません。




心当たりがありましたら、研修と合わせて

ご相談いただければと思います。




今日は、

研修の生産性を上げるために

フォーカスしたアクションプランを作る



についてお話ししました。




次回は「研修参加者の動機」について

考えてみたいと思います。

研修の生産性を高めるには➀

研修において「学び」を得る事は重要ですが、

学ぶだけでは、その後の成果に繋がりません。

学びを実践の場で活かすことによって、

初めて研修に意味が生まれます。




そんなことは言われなくても

「百も承知だよ」と思うかもしれませんが、



実際には「研修の時は良かったんだけど、

職場に帰ったら、



研修前の状態に戻ってしまった」と言う話を

良く耳にします。


そのくらい研修の効果を持続させるというのは

難しい事なのです。




また、学びや気づきを行動に移してもらう為に

仕掛けを作れば良いじゃないかという事で

アクションプランを講座に組みこんだりしますが




それでも、残念ながら、大半はいつの間にか

なし崩しになってゆくケースが圧倒的に多いようです。





なぜ、成果を生まない研修になってしまうのか?と言うと

主に下記のような理由が考えられます。


➀アウトプットの場がない


②アクションがフォーカスされていない


③参加者にとって学ぶ動機が弱い


④確認とフォローがない


他にも

・「研修の目的」が明確でない

・役職は一緒でも抱えている課題レベルが

参加者によって異なっている為コンテンツのフィット感が薄い


・オリンピックのように

「参加する事に意義がある」という認識を参加者、

提供側が持っている

・・・・・等がありますが



今回は先に挙げた4つについて

順を追って考えてゆきたいと思います。




まず今日は「アウトプットの場がない」

という事についてお話しします。



私たちは、研修やセミナーに参加したり、本を読んだりしながら、

知識を「インプット」しています。


ただし、「インプット」だけだと

徐々に忘れてしまうのです。




なぜかと言うと人の記憶は、

1時間で半分、1日で約7割近くも忘れるようにできています。



それは、脳の中にある「海馬」という部分が、忘れるという事に

大きな役割を果たしているからです。



海馬の働きを簡単に言ってしまえば、

「記憶の整理をする」こと。




私達は毎日膨大な量の情報を受け取っていますが、

それを全て処理し、記憶することはできません。



なぜなら、キャパオーバーになってしまうからです。




そこで海馬が 「この情報は絶対に忘れないようにしよう」

「これは忘れても生活にも支障がないから、デリートしよう」



といったように、情報を「残す」「捨てる」を決めているのです。




「三日前の夕食に食べたものを思い出して」と言われても

なかなか思い出せないのはそういう理由があるからです。




したがって、学びを忘れないようにするには

「この情報は大切である」と海馬に認識させることが大切です。




では、どうやって海馬に認識させるのか?

ということですが、



おすすめは「アウトプット」することです。



つまり、人に内容を話したり、説明したり、

何かに書いたりすることです。




特に「話す、説明する」は

「自分の耳」で自分が話した内容を




聴く事になるので理解が深まり、

学びを定着させるには最適です。




同じ内容のプレゼンテーションを

何回もこなすとうまくなってゆくのは

そういう理由があるからです。




さらに、アウトプットの機会を事前に予定しておくと

効果が大きくなります。




例えば、授業で「今日は全員にあてるぞ!!」と

先生が言ってから、授業を行うと

生徒はいつもより授業に集中して、

先生の話を聴こうとします。




なので、私の研修においてアクションプランの一項目を、

「誰かに内容を15分で話す」にしているのは、




参加者の脳に研修の学びを留めて

「活きた知識」にする為です。




これは「研修」だけでなく、

日々のOJTの中にも取り入れることができます。




何か新人に説明をした時に「わかった?」「はい」と言う

「やりとり」で終わりにするのではなく、




一旦説明した後に

「じゃあ、何がわかったのか教えて」

というリクエストを新人に投げてみてください。




最初は意表を突かれたような

「えっ?」と言う反応をしますが、




繰り返し、問い直しを続けてゆくと




新人は、「また、説明しろって言われるな」と考え、

説明できるようになるまで理解しょうとします。





また、それに伴い、新人から出てくる

「質問のレベル」もどんどん向上してゆきます。



私がファミレスや中古のゴルフショップ時代に

部下育成やアルバイト育成でよく使った「手」です。




最初は、部下を試すような感じがして

抵抗を感じるかもしれませんが、




成長スピードは圧倒的に早くなりますので

やる価値があります。




今日は、研修での学びを

「意味あるものにする」ための第一歩として

「アウトプットをさせる事」であるというお話をしました。





これは、すぐ現場でできる事なので、

ぜひ実践していただけたら幸いです。

次回は研修の生産性を高める方法②として

「アクションをフォーカスする」を

おおくりいたします。

部下の主体性を覚醒させるには⑥

プレイングマネージャー「虎の巻」

今日は「自信の能動的獲得と受動的獲得」について

お話ししたいと思います。


これまで部下の自信を育むことが

主体性の覚醒に繋がるというお話をしてきました。






人の成長とはまさに

自信を増やしてゆく事に他なりません。

では、その自信はどのように獲得されるのかという事ですが、




まず、イメージできるのは、

何かしら目標を達成できた時ではないかと思います。






努力が実り、成果に繋がった瞬間に

私たちは、「自信」を感じる事が出来ます。




私は、これを自信の「能動的獲得」と呼んでいます。


日々そういう出来事があれば、

放っておいても勝手に自信は積み重なってゆくのでしょうが、

実際にはそうはいきません。





なぜなら、上手くいく事よりもいかない事の方が多いのが

この世の常だからです。





なので、私たちが部下を育てる上で

成果が表れる場面にだけ「注目」していると

なかなか「自信」を獲得してもらう場面は訪れないわけです。






そこで、今日一番お伝えしたい事である「受動的獲得」が

重要になってきます。



自信の「受動的獲得」とは「人からのメッセージ」で

獲得する自信の事を意味しています。




簡単に言えば、人から「褒められる」「称賛される」「承認される」

事によって得られる自信です。





これは、部下自身も何気ないひらめきや

ちょっとした発見によって





行動に移すことも多く、本人も自覚しにくい場合もありますので

上司であるプレイングマネージャーの観察力が問われます。





どういう所を見るのか?どういうタイミングなのか?は

慣れが必要なので、しばらくは意識的に

「訓練」する必要があります。



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■自信の受動的獲得はなぜ有効なのか?

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訓練してまで、「褒める」「称賛される」「承認する」等の

メッセージを送る意味は、

日常の中で、観察の仕方がわかると

部下がプチ成長している場面に

たくさん遭遇することができるからです。





「説明の仕方を変えたな」「資料の整理、工夫したんだな」

「いつもより良い笑顔で接客できていたな」など




ちょっとした成長を感じたり、

いつもと違う改善が見られたり

部下の何気ない変化に気が付くことがあるはずです。






それを「そのまま」伝える事で

上司は、自分を見てくれている、認めてくれる

と思うようになり、



仕事に対するモチベーションが上がるのと同時に

「自信」を持つことができます。





元々私たち人間には、「自分を見て欲しい」

「気にして欲しい」という




帰属認知欲求と言うものがあり、

これが、信頼関係の構築や、

成長を加速する要因に繋がるわけですが、





これを十分理解した上で「部下育成」に活かせば、

部下は、上を向いて進み続ける事が出来ます。


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■でも褒めるのは難しい?

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「いざ、褒めようと思うとなかなかうまくいかないんですよね」

私の研修に参加したプレイングマネージャーから

良く出てくる「悩み」です。





誰しも「褒められれば」うれしいものですが、

無理して「褒める」必要はありません。


「褒めなくては」と思うと「なんて言おうか?」と

伝える言葉を考えてしまったり、



表情や言い方が「不自然」になってしまう事もあり、

度が過ぎると「逆効果」になってしまう場合もあります。






なので、「感じたまま」をそのまま伝えれば良いのです。





先ほどの例で言えば、

「説明の仕方変えたんだね」

「資料整理工夫したんだね」

「今日笑顔良かったよ」

みたいな感じです。






そして、あともう一つ大切な事は

気が付いたら「すぐに伝える」という事。







なぜなら、

後で言おうと思うと忘れてしまう事が多いのと

本人も自覚がなくなってしまうからです。





なので、鮮度管理も

部下を承認する事においてとても大切なので

気に留めていただきたいと思います。






今日は、「自信の能動的獲得」と「受動的獲得」について

お話ししました。



忙しいプレイングマネージャー育成の一助となれば幸いです。