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经营与财务

店舗の固定費を削減する方法|見直すべき10項目

店舗の固定費を削減する方法|見直すべき10項目

売上が伸び悩む時でも、利益を早く立て直しやすいのが固定費の見直しです。
固定費は一度下げると毎月効果が積み上がるため、店舗経営では原価調整より先に手を付ける価値がある場面が少なくありません。

この記事は、飲食店や小売店、サービス業のオーナーが、固定費を10項目に分けて棚卸しし、家賃・人件費・水道光熱費の目安と照らしながら、今月中に着手すべき1〜3個の削減策を見つけるための実務ガイドです。
筆者が支援してきた小規模店舗の事例では、通信やSaaSの整理で月1〜3万円程度、光熱費の運用見直しで数%〜10%程度の削減が見られたケースがあります。
効果には店舗ごとの差があるため、まずは自店で試算を行ってから着手してください。

大切なのは、思いつきで一律に削ることではなく、削減額と影響度、実行しやすさで優先順位を決めることです。
品質低下や労務・契約のトラブルを避けながら、利益改善につながる固定費だけを見極めていきます。

店舗の固定費を削減する前に知っておきたい基本

固定費とは何か

固定費とは、売上や生産量の増減に直接は連動せず、売上がゼロでも継続して発生する費用のことです。
『三井住友DSアセットマネジメントの用語解説』や、弥生の解説でも、この考え方が基本として整理されています。
店舗経営でいうと、家賃、共益費、リース料、保険料、減価償却費、支払利息、SaaSの月額利用料、そして正社員の基本給や毎月ほぼ固定で入れるシフト人件費などが代表例です。

ここがポイントです。
固定費は「高いか安いか」だけでなく、「毎月ほぼ自動的に出ていくか」で見ると整理しやすくなります。
たとえば家賃は、今月の来店数が少なくても請求は止まりません。
リース契約中の厨房機器やPOS周辺機器も同じです。
こうした費用は、一度見直せれば効果が毎月積み上がるため、利益改善への影響が大きくなります。

一方で、固定費はむやみに削ればいいわけではありません。
中小企業庁などでも、必要なコストまで削ると品質低下や従業員モチベーション低下につながる点が繰り返し指摘されています。
店舗の固定費を考えるときは、「削れそうか」より先に、「この支出は売上ゼロでも発生するのか」を見極めることが出発点になります。

わかりやすい用語集 解説:固定費(こていひ)smd-am.co.jp

変動費との違いと混在費用の分け方

決済手数料はカードブランドや契約形態で幅があり、報告例としては3%台の事例もありますが、1.6%〜4%程度の幅が報告されることもあるため、自社の契約条件を必ず確認してください。
手数料は売上に連動するため、契約内容に応じた収益シミュレーションが必要です。

固定費と変動費を分けて把握する意味は、利益構造が見えやすくなることです。
売上が落ちたときに自然に減る費用なのか、売上が落ちてもそのまま残る費用なのかで、打ち手がまったく変わるからです。
前者は運営効率や原価管理、後者は契約や体制の見直しが中心になります。

実務で悩みやすいのが、固定費と変動費が混ざっている費用です。
人件費や水道光熱費、配送費、広告費の一部はこの典型です。
こうした混在費用は、勘定科目を丸ごと固定費・変動費のどちらかに寄せるのではなく、内訳で分けて管理すると判断しやすくなります。

筆者の相談現場でも多い誤解なのですが、電気代を全額「固定費」に入れてしまい、運用改善の余地を見落としているケースがあります。
実際には、基本料金のように固定的な部分と、使用量に応じて増減する部分が混ざっています。
請求書をその2つに分けるだけで、契約見直しが効くのか、空調や照明の運用改善が効くのかが見えてきます。
数字は経営の健康診断です。
分類が粗いままだと、症状は見えても原因を取り違えやすくなります。

損益分岐点と固定費の関係

固定費を理解するうえで外せないのが、損益分岐点です。
損益分岐点とは、利益がちょうどゼロになる売上高、つまり赤字でも黒字でもない境目のことです。
計算式は次の形で表せます。

損益分岐点売上 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

たとえば、月の固定費が100万円、変動費率が60%だとします。
このとき、1−0.6で40%が限界利益率なので、損益分岐点売上は100万円÷0.4で250万円です。
つまり、月商250万円を超えてはじめて営業利益が出やすくなります。

ここで固定費を90万円まで下げられたとすると、計算は90万円÷0.4で225万円になります。
必要売上は25万円下がります。
売上を25万円増やすのは簡単ではありませんが、固定費を月10万円下げると、必要売上のハードルがそれだけ下がるわけです。
固定費削減が利益改善に効きやすい理由はここにあります。

店舗経営で固定費の見直しが重視されるのは、単に支出が減るからではありません。赤字にならないために必要な売上水準そのものが下がるからです。
売上が読みにくい時期ほど、この効果は大きく感じられます。

人件費・光熱費の扱い方

人件費は、よく固定費として一括りにされますが、実務ではそこまで単純ではありません。
正社員の基本給や、毎週ほぼ固定で組んでいるシフト人件費は固定費として見やすい一方、歩合給、残業代、繁忙日の臨時アルバイト代、派遣費用などは売上や稼働に応じて増減しやすく、変動費として捉えた方が経営状態を正確に見やすくなります。
美容室で歩合給部分を固定費ではなく変動費として見る考え方は、その代表例です。

この分け方をすると、人件費の議論がかなり建設的になります。
「人件費が高い」という曖昧な話ではなく、「固定人件費が重いのか」「繁忙対応の変動人件費が膨らんでいるのか」に切り分けられるからです。
たとえば飲食業では人件費の目安が売上の30〜40%、サービス業では40〜60%、小売業では10〜30%とされますが、その内訳を見ないままでは改善策を誤りやすいです。

水道光熱費も同じで、固定費として一括で処理すると改善余地を見落とします。
電気・ガス・水道には、契約上の基本料金や最低利用前提の部分という固定要素があり、実際の使用量に応じて増減する従量課金という変動要素があります。
この記事で固定費の見直し対象に含めるのは、主にこの基本料金と最低利用前提の契約部分です。
一方、従量課金部分は、照明や空調の運用改善、省エネ設備の導入効果を検討する対象として扱うと整理しやすくなります。

省エネの現場では、まず照明や空調の運用改善から手を付けやすいとされます。
実際、冷蔵・冷凍設備の更新で電気使用量が12%下がった事例や、業務用エアコンの更新で年間消費電力が約300kWh減る試算もあります。
ただし、節電は安全衛生や作業性を損なわない範囲で進めるのが前提です。
経済産業省の事業者向け節電資料でも、照明の間引きでは作業内容に応じた照度への配慮が示されています。

TIP

人件費も光熱費も、「科目で決める」のではなく「内訳で分ける」と対策が具体化します。
固定部分は契約や体制の見直し、変動部分は運用改善や原価管理という整理がしやすくなります。

用語メモ

固定費は、売上がなくても毎月出ていく費用です。家賃やリース料、保険料、減価償却費、正社員の基本給の一部などが当てはまります。

変動費は、売上や稼働に応じて増減する費用です。食材費、仕入、決済手数料、歩合給の一部などが代表例です。

損益分岐点は、利益がゼロになる売上高です。固定費が高いほど、黒字化に必要な売上も高くなります。

FLコストは、主に飲食店で使われる指標で、**Food(食材費)Labor(人件費)**を合計したコストを指します。
原価と人件費を一体で見ることで、売上に対して店舗運営の中心コストが重すぎないかを把握しやすくなります。

まず確認したい|店舗の固定費で見直すべき10項目

固定費10項目リスト

固定費の棚卸しは、勘定科目をそのまま眺めるよりも、「売上がなくても定期的に出ていく契約や支払い」を10項目に分けた方が進みます。
ここでは、店舗で見落としにくく、かつ削減余地の有無を判断しやすい代表項目を並べます。
まずはこの10項目で自店の支出を一度受け皿に入れてみるのが実務的です。

  1. 家賃

    削減余地の典型は、賃料交渉、面積の再検討、空き区画や近隣相場を踏まえた条件見直しです。
    店舗家賃は売上の10%以下が一つの目安とされることが多い(出典: ビズキューブ等業界目安)が、地域・業態・面積により大きく変わります。
    まずは「今の賃料が売上に対して何%か」を数字で把握し、相場と契約条件に基づいて交渉準備を進めてください。

    品質・法務の注意点は、立地変更や縮小が売上に直結する点です。
    契約更新日、定期借家か普通借家か、増額・減額条項の有無を先に押さえておくと話が進めやすくなります。

  2. 共益費・更新料

    家賃本体より見落とされやすいのがこの部分です。
    共益費の内訳が不明瞭なまま固定的に払い続けているケースや、更新料を年額で見ずに月額感覚をつかめていないケースがあります。

    注意点は、建物維持や共用部管理に関わる費用が含まれるため、単純に不要とは言い切れないことです。
    更新時期、更新料の金額、再契約時の条件変更余地を一覧にしておくと判断しやすくなります。

  3. 正社員・固定シフト人件費

    固定費として見るべきなのは、正社員の基本給や毎週ほぼ固定で入っているシフト分です。
    削減余地の典型は、役割の重複解消、営業時間に対して過剰な固定配置の見直し、固定給と変動給の設計の整理です。

    品質・法務の注意点は最も大きく、無理な削減は接客品質の低下や定着率悪化につながります。
    雇用契約の変更時期、就業条件の見直しタイミング、賞与や手当の固定部分も確認対象です。

  4. リース料

    POS周辺機器、厨房機器、複合機、清掃機器などはリース契約のまま長く払い続けていることがあります。
    削減余地は、再リース条件の見直し、不要機器の整理、所有切替の比較です。

    注意点は、契約期間中の中途解約がしにくいことです。満了日、再リース移行条件、保守込みかどうかを確認すると、次の更新でコストを下げやすくなります。

  5. 通信費

    店舗回線、電話、モバイル端末、Wi-Fi、予約受付用のSIMなどが重なっていると、固定費が膨らみやすい項目です。
    筆者の支援先でも、通信費とSaaSは二重契約や未使用オプションが重なり、月1万円以上を余分に払っているケースが珍しくありません。

    注意点は、回線品質を落とすと決済や予約対応に影響しやすいことです。契約更新月、端末残債、違約金、オプション自動更新の有無まで見ておくと無駄が見えます。

  6. 電気・ガスの基本料金

    ここで固定費として見るのは基本料金部分です。削減余地は、契約アンペアや契約容量の見直し、営業実態に対して過大な契約になっていないかの確認です。

    注意点は、基本料金を下げすぎるとピーク時の運営に支障が出ることです。
    従量課金は変動要素なので分けて考え、契約種別や容量変更の時期を把握しておくと整理しやすくなります。

  7. 保険料

    火災保険、賠償責任保険、店舗休業関連の補償などは、毎年自動更新になりやすい固定費です。削減余地は、補償の重複整理、不要特約の削減、保険期間の見直しです。

    注意点は、事故時に本当に必要な補償まで削らないことです。更新月、補償内容、特約の有無を一覧化すると、見直しの優先順位がつけやすくなります。

  8. 借入返済関連費用・支払利息

    元本返済そのものは費用とは性質が異なりますが、資金繰り上は毎月固定的に出ていく支払いとして把握しておく価値があります。
    損益上の固定費としては主に支払利息や借入に付随する固定的な手数料が対象です。

    注意点は、会計上の費用と資金繰り上の支出を混同しないことです。返済日、金利条件、借換え余地、据置終了時期の把握が重要になります。

  9. POS/SaaS・サブスク

    POS、予約システム、会計クラウド、勤怠、顧客管理、メール配信、分析ツールなど、月額課金は増えやすい一方で把握しにくい項目です。
    削減余地は、機能重複の統合、未使用アカウントの停止、上位プランからの見直しです。

    注意点は、安易な解約で現場業務が止まることです。
    請求単位が月払いか年払いか、アカウント数課金か、更新タイミングはいつかを見ておくと、次の打ち手が明確になります。

  10. 広告・会費・ロイヤリティ等の固定契約費

    定額掲載料、加盟会費、団体会費、フランチャイズのロイヤリティ、定期制作費などが含まれます。削減余地は、成果の薄い媒体の整理、プラン変更、固定契約の統合です。

    注意点は、集客チャネルを急に減らすと売上に影響しやすいことです。契約期間、最低利用期間、自動更新の有無、解約申告期限まで確認しておくと判断しやすくなります。

こうして並べると、固定費は「大きなものだけ」ではありません。
家賃や人件費のような大型項目はもちろん重要ですが、通信費、SaaS、会費のような中小の定額支出が積み上がって利益を圧迫している店舗も多いです。
数字は一つひとつは小さく見えても、毎月出ていく支出に変わりはありません。

通帳・明細からの洗い出し手順

固定費の棚卸しは、会計ソフトの試算表だけで済ませるより、直近3か月の通帳、カード明細、請求書を並べて確認した方が精度が上がります。
試算表では「支払手数料」「雑費」に紛れているものが、実際の明細を見ると固定契約だったということがよくあるからです。

進め方はシンプルです。
まず3か月分の入出金記録から、毎月ほぼ同じ金額または定期的に発生している支払いを抜き出します。
次に、その支払いを先ほどの10項目に振り分けます。
月払いだけでなく、年払いの保険料や更新料、会費も忘れずに拾い、月額換算と年額の両方を並べます。
月額だけで見ると軽く見える支出も、年額で並べると優先順位が変わることがあります。

一覧の雛形は、次の項目があれば十分です。

支出名分類支払先月額年額支払方法契約更新日違約金・解約条件利用状況メモ
例:店舗家賃家賃貸主・管理会社記入記入口座振替記入記入使用中条件交渉余地
例:予約システムPOS/SaaSベンダー名記入記入カード記入記入毎日使用他機能と重複
例:店舗回線通信費通信会社記入記入口座振替記入記入使用中オプション確認

この一覧を作るときのコツは、勘定科目ではなく契約単位で見ることです。
たとえば「通信費」と一括で処理していても、中身は固定回線、店舗電話、スタッフ用端末、決済端末の通信、予約受付の番号サービスに分かれていることがあります。
SaaSも同じで、POS、予約、会計、勤怠、顧客管理が別々に課金され、しかも一部は使っていないまま残っていることがあります。
筆者が現場でよく見るのは、前任者が導入したまま誰も触っていないオプションや、似た機能を持つサービスの並存です。
こうした重複は、帳簿では見つけにくく、カード明細と請求メールを並べると浮かび上がります。

洗い出しの段階では、各項目に短いコメントを付けておくと、その後の優先順位付けが速くなります。
書く内容は多くなくて構いません。「削減余地の典型」「品質・法務の注意点」「契約更新日の確認ポイント」の3つを1〜2行ずつ添えるだけで十分です。
たとえば家賃なら「近隣相場を踏まえた交渉余地あり」「立地変更は売上影響大」「更新月と契約種別を確認」といった具合です。
SaaSなら「未使用アカウント削減余地あり」「機能停止で業務影響の可能性」「年払い更新月を確認」と整理できます。

TIP

固定費の棚卸しでは、「いくら払っているか」だけでなく「いつまで払う契約か」を同じ行に並べると、削減できる支出と、今は動かせない支出がはっきり分かれます。

一覧ができたら、自店の上位3項目に★印を付けます。
基準は単純で、金額が大きいもの、更新や解約のタイミングが近いもの、重複や未使用が疑われるものです。
この印を付けるだけで、「今月着手の候補」が自然に絞られます。
棚卸しの目的は、完璧な台帳を作ることではなく、利益改善につながる順番を見える化することにあります。

優先度マトリクスの作り方

固定費の見直しは、削れそうなものから順に着手すると遠回りになりがちです。
そこで使いやすいのが、削減額・影響度・実行難易度の3軸で並べるマトリクスです。
数字を細かく点数化しなくても、大・中・小、高・中・低で十分機能します。

見方はこうです。

削減額は、見直したときにどれだけ利益改善につながるかです。

影響度は、削減したときに売上、品質、運営にどの程度影響するかです。

実行難易度は、契約交渉、社内調整、手間の大きさを表します。

代表項目を置くと、次のように整理しやすくなります。

項目削減額影響度実行難易度優先度の見方
家賃効果は大きいが着手の準備が要る
共益費・更新料契約確認で改善余地が見えやすい
正社員・固定シフト人件費粗い削減は避け、配置と役割で見る
リース料満了日が近いと動きやすい
通信費重複解消がしやすく、初手に向く
電気・ガスの基本料金契約容量の過不足を確認しやすい
保険料小〜中低〜中特約整理で改善しやすい
借入返済関連費用・支払利息条件変更には準備が必要
POS/SaaS・サブスク未使用契約の整理が効きやすい
広告・会費・ロイヤリティ等中〜高成果の検証が前提になる

この表から見えてくるのは、家賃と人件費はインパクトが大きいが、すぐに切り込むには難しいということです。
一方で、通信費やPOS/SaaSは削減額こそ家賃ほどではないものの、影響度が低く、実行難易度も低いため、今月の改善策として扱いやすいです。
固定費削減で成果を出しやすい店舗は、まずこの「影響が小さく、動かしやすい支出」から着手し、その後に大型項目へ進みます。

実務では、一覧表に次の3列を追加するだけでマトリクスになります。

支出名月額削減額影響度実行難易度今月着手
店舗家賃記入
店舗回線記入
予約システム記入
保険料記入小〜中低〜中

この「今月着手」に★を付けた上位3項目が、そのままチェックリストになります。
考え方としては、削減額が中以上で、影響度が低く、難易度が低いものを先に置くと失敗しにくいです。
家賃のように金額が大きい項目は、情報収集や交渉準備の対象として残しつつ、今月の成果は通信費やSaaS整理で確保する、という進め方が現実的です。

契約更新日・違約金の確認ポイント

固定費は、金額だけ見ていても下げられません。
実際に動かせるかどうかは、契約更新日、解約申告期限、違約金の有無で決まる場面が多いからです。
ここを押さえずに見直しを始めると、「削れそうだったのに今月は動けない」ということが起こります。

確認したいポイントは4つあります。

1つ目は、自動更新かどうかです。保険、SaaS、広告掲載、会費は、自動更新で続いていることが多く、止めるには事前申告が必要です。

2つ目は、解約申告の締切日です。月末解約と思っていたら、実際は前月中旬までの申告が必要だった、というケースは珍しくありません。

3つ目は、違約金または残債の有無です。通信契約やリース契約では、この確認が抜けると比較を誤ります。

4つ目は、更新月と支払方法です。年払い契約は、更新直前に整理しないと1年分がそのまま継続してしまいます。

確認の優先順位でいうと、まず通信費、POS/SaaS、広告・会費を見ます。
これらは比較的動かしやすく、更新や解約ルールを把握した瞬間に無駄が見えることが多いからです。
家賃や人件費は影響が大きく、準備も必要ですが、通信やサブスクは契約情報の整理だけで改善候補が出やすいです。
筆者の現場感覚でも、固定費見直しの初月に結果が出る店舗は、この契約情報の掘り起こしが丁寧です。

一覧表のメモ欄には、金額だけでなく、「更新月」「申告期限」「違約金」「担当者名」まで入れておくと実務で困りません。
とくにSaaSや広告契約は、導入時の担当者が変わっており、現場が契約条件を把握していないことがあります。
そうした支出は、利用頻度の確認と契約条件の確認を同時に進めると、残すべきものと止める候補が分かれます。

この段階まで整理できると、固定費の棚卸しは単なる節約リストではなく、いつ・何を・どこから見直せるかが見える管理表になります。
オーナーにとって重要なのは、全項目を一度に削ることではなく、更新タイミングに合わせて、利益改善につながる順番で動かせる状態を作ることです。

削減効果が大きい3大固定費の見直し方

家賃:10%目安と交渉・面積最適化

家賃は、固定費のなかでも削減インパクトが最も大きい項目です。
ビズキューブが示す店舗経営の目安では、家賃は売上の10%以下が一つの基準です。
もちろん立地業態ではこの水準を超えることもありますが、まずは「今の賃料が売上に対して何%か」を数字で置くことが出発点になります。

筆者が現場でよく見るのは、売上に対して家賃が重いと感じながら、相場確認や契約条項の整理をしないまま「ここでやるしかない」と止まってしまうケースです。
ここがポイントで、家賃見直しは感覚ではなく、交渉準備の質で結果が変わります。
段取りとしては、近隣相場の確認、現契約の把握、交渉材料の整理、面積の使い方の見直し、必要なら移転比較、の順で進めると整理しやすいです。

近隣相場を見るときは、同じ駅勢圏でも路面か空中階か、面積帯が近いか、飲食可能かどうかで条件が変わります。
そのうえで、自店の契約書から賃料だけでなく、共益費、更新料、定期借家か普通借家か、中途解約条項、減額交渉に影響しそうな文言まで拾います。
ここが曖昧だと、貸主との話し合いが「厳しいので下げてほしい」というお願いで終わりやすくなります。

交渉材料として使いやすいのは、近隣の募集状況、周辺空室の有無、売上と賃料比率の現状、長期入居実績、設備負担の状況です。
特に、空室リスクが貸主にとって無視できない局面では、賃料そのものの減額が難しくても、一定期間の条件変更、共益費の調整、更新条件の見直しといった着地が見えることがあります。

店内の面積最適化も見逃せません。
バックヤードが過大、客席稼働率に対して席数が多すぎる、使っていない区画を抱えているといった状態では、売上を生まない面積に賃料を払っていることになります。
倉庫機能の外出しや客席レイアウトの再設計で、必要面積の考え方が変わる店舗は少なくありません。
現店舗での一部返却が難しい契約でも、次回更新や移転比較の判断材料になります。

たとえば、月商300万円で家賃45万円の飲食店なら、家賃比率は15%です。
10%に近づけるとすると月30万円が一つの基準になるので、差額は月15万円です。
年換算では180万円になり、交渉や面積最適化に時間をかける意味が数字で見えてきます。
筆者の経験でも、このくらいの改善余地が見えると、移転の初期負担まで含めて比較検討する価値が出てきます。

人件費:業種別目安と配置・シフト設計

人件費は「削る」よりも、売上に対して適切に配置するという見方が重要です。
ビズキューブの目安では、人件費率は飲食業で30〜40%、サービス業で40〜60%、小売業で10〜30%とされています。
同じ高い・低いでも、業種が違えば適正水準が異なるため、まず自店がどの帯にいるかを確かめる必要があります。

人件費の改善で効果が出やすいのは、総額だけを追う場面ではなく、時間帯別の配置とシフトの組み方を見直した場面です。
たとえば、ピーク前後に人が余っている、アイドルタイムに固定人数を置いている、仕込みや開店準備が属人的で長引いている、といった状態では、売上に結びつかない人時が増えます。
人時とは、1人が1時間働く単位のことで、シフト設計ではこの積み上がりを見ます。

実務では、曜日別・時間帯別の売上と来客数を並べ、必要な業務を洗い出したうえで、必要人数ではなく必要作業から逆算すると改善しやすいです。
ホール、キッチン、レジ、補充、清掃などを切り分けると、フルメンバーでなくても回る時間帯が見えてきます。
固定シフトのまま人件費率が悪化している店舗ほど、この工程表の発想が効きます。

歩合やインセンティブ設計も、業種によっては有効です。
美容や施術系サービスでは、固定給だけでなく指名や売上連動の設計を組み合わせることで、固定人件費を抑えつつ、売上拡大と連動した支払いに寄せやすくなります。
ただし、この設計は単なるコスト削減策ではなく、評価基準の明確化や定着率への影響まで含めて考えるべき領域です。

もう一つ効くのが、業務標準化と教育です。
ベテランしかできない作業が多い店舗は、結果として高コスト体質になりやすいです。
仕込み手順、レジ締め、開閉店作業、接客の基本動作を標準化すると、シフトの自由度が上がり、教育時間も短くなります。
筆者が支援した店舗でも、人を減らしたというより、同じ人数で回る生産性が上がった結果として人件費率が下がったケースが多くあります。

なお、人件費の見直しは労働条件に直結するため、就業ルールや賃金設計の変更を伴う場合は法令順守が前提です。
勤務時間管理や賃金制度に関わる論点は、社労士と連携して整理する場面も出てきます。

水道光熱費:運用改善と設備更新

水道光熱費は、ビズキューブの整理では売上の10%以下が目安です。
家賃や人件費に比べると1回の削減額は小さく見えますが、店舗数が少ない事業者ほど毎月の積み上がりが利益に直結します。
しかも、運用改善で取り組みやすい項目が多いのが特徴です。

即効性が高いのは、日々の使い方を整える運用改善です。
代表的なのは空調の温度設定の見直し、電力ピークを抑えるデマンド管理、閉店後の待機電力削減です。
営業終了後も冷蔵設備以外の機器が通電したままになっている、使っていない時間帯まで照明や空調がフル運転になっている、といった店舗では、比較的早く差が出ます。
特に、閉店後のルーティンを決めるだけで、不要な通電の取りこぼしが減ります。

一方で、中長期で効くのは設備更新です。
LED照明、高効率の業務用エアコン、冷蔵・冷凍設備の更新は、初期投資こそ重いものの、運転コストの差が年単位で積み上がります。
既出の通り、冷凍・冷蔵設備では電気使用量が12%下がった事例があり、業務用エアコンでも年間消費電力が約300kWh減る試算があります。
筆者の実務感覚では、空調更新は導入時の金額だけで判断すると止まりやすいのですが、5年スパンで回収計算を置くと意思決定しやすくなります。
月次の電気代差額だけでなく、故障頻度やメンテナンス負担の減少まで含めると、更新の意味が見えやすくなるからです。

省エネでは、削減と同時に安全衛生や品質への配慮が欠かせません。
経済産業省の事業者向け節電資料でも、照明を間引く際には作業内容に応じた照度への留意が示されており、参考値として精密作業300Lx、普通作業150Lx、粗な作業70Lxがあります。
空調も同じで、温度を下げすぎる、上げすぎると、従業員の作業性や来店客の快適性に跳ね返ります。
節電は、営業品質を落とさない範囲で行うことが前提です。

TIP

水道光熱費は、まず運用改善で無駄を止め、そのうえで設備更新を投資案件として比べると整理しやすいです。
月次の削減額だけでなく、年額と更新後の運転負担まで並べると判断がぶれにくくなります。

削減効果の簡易試算フォーマット(本記事内のテンプレート)

固定費見直しは、施策名だけ並べると優先順位がぶれます。
そこで役立つのが、月商・現在比率・目安との差・削減額を並べる簡易試算です。
数字は経営の健康診断ですから、改善余地を比率と金額の両方で見える化すると、家賃・人件費・水道光熱費のどこから着手すべきかが明確になります。

使い方はシンプルです。
月商に対して、現在の支出額が何%かを出し、目安との差を確認します。
差額に月商を掛けると、改善余地の概算が見えます。
年額は月額の12か月分です。

項目月商現在額現在比率目安比率削減余地(円/月)削減余地(円/年)
家賃記入記入記入10%記入記入記入
人件費(飲食)記入記入記入30〜40%記入記入記入
人件費(サービス)記入記入記入40〜60%記入記入記入
人件費(小売)記入記入記入10〜30%記入記入記入
水道光熱費記入記入記入10%記入記入記入

たとえば家賃なら、月商300万円、家賃45万円で現在比率は15%です。
目安の10%との差は5%なので、改善余地は月15万円、年180万円と置けます。
この形にしておくと、家賃交渉に時間をかける価値と、先に通信費やSaaSを整理して今月の利益を確保する価値を、同じ物差しで比べられます。
人件費や水道光熱費も同じで、感覚的に「高い気がする」ではなく、何%高く、その結果いくら改善余地があるかまで落とし込むと、施策の順番が決めやすくなります。

業種別に見る固定費の考え方|飲食店・美容室・小売店

飲食店:家賃・光熱費の最適化ポイント

飲食店の固定費は、同じ「店舗ビジネス」でも特に家賃と光熱費の重さが利益に直結しやすいのが特徴です。
客席だけでなく厨房面積も必要になり、立地への依存も大きいため、賃料の負担が高止まりしやすいからです。
さらに、冷蔵・冷凍設備、製氷機、食洗機、フライヤー、空調など、営業時間中も営業前後も電力を使う機器が多く、営業時間の長さがそのままコスト差になりやすいです。

ここがポイントです。
飲食店の光熱費は、単に「電気代が高い」で終わらせず、設備の性能差日々の運用差を分けて見ると改善策が見えます。
たとえば、冷蔵庫の詰め込みすぎで放熱効率が落ちている、フィルター清掃が不十分で空調効率が落ちている、仕込み後も不要な機器が待機通電のままになっているといった状態は、現場では珍しくありません。
こうした運用面は、温度設定、清掃頻度、立ち上げ時間、閉店後の電源オフ手順を整えるだけでも差が出ます。

一方で、古い厨房機器や空調を使い続けている店舗では、運用改善だけでは限界があります。
前述の通り、冷蔵・冷凍設備の更新で電気使用量が下がるケースや、業務用エアコン更新で年間消費電力の削減が見込める試算もあり、飲食店では設備更新の効果が比較的大きく出やすいです。
筆者の支援先でも、厨房機器は壊れるまで使うという発想から、故障前に収支で判断する発想へ切り替えた店舗ほど、利益改善が安定しやすい傾向があります。

家賃については、飲食店では「外せない費用」であることが多い半面、条件の見直し余地が完全にないわけではありません。
路面立地や駅近など、売上を支える立地価値が明確な費用は削りにくい一方、倉庫スペースの使い方、客席配置、テイクアウト比率の変化によって、面積の持ち方が現状に合っていないケースはあります。
つまり、飲食店では家賃そのものを無理に削るより、今の売り方に対して、その面積と立地が本当に必要かを見直す視点が大事です。

TIP

飲食店では、立地を支える家賃や冷蔵設備のような「外せない費用」と、待機電力や機器の使い方、営業時間ごとの空調運転のような「運用で変えられる費用」を切り分けると、手を付ける順番が明確になります。

美容室:人件費比率と歩合設計の工夫(本記事の業種別具体例)

美容室で主戦場になりやすいのは、家賃よりも人件費比率です。
サービス業の中でも、美容室は技術提供そのものが売上の源泉なので、スタッフ配置や賃金設計が利益を大きく左右します。
固定費の議論でも、単純に人件費を下げるのではなく、固定給として重い部分売上連動で設計できる部分を分けて考えると、判断がかなりクリアになります。

美容室で主戦場になりやすいのは、家賃よりも人件費比率です。
サービス業の中でも、美容室は技術提供そのものが売上の源泉なので、スタッフ配置や賃金設計が利益を大きく左右します。
固定費の議論でも、単純に人件費を下げるのではなく、固定給として重い部分売上連動で設計できる部分を分けて考えると、判断がかなりクリアになります。

よくある誤解なのですが、歩合給を導入すれば人件費問題が解決するわけではありません。
歩合が高すぎると、売上が伸びても利益が残りにくくなりますし、逆に固定給が重すぎると、予約が薄い日でも人件費が先に確定してしまいます。
美容室では、このバランス設計が非常に重要です。
筆者は経営相談の場で、歩合部分をあえて変動費に近い発想で整理することがあります。
そうすると、「人件費が高い」のではなく、「固定人件費が重いのか、成果連動部分の設計が甘いのか」が見えやすくなるからです。

たとえば、スタッフ3人で月商250万円の美容室なら、人件費比率が55%だと人件費は137.5万円です。
これを50%に抑えられると125万円になり、月12.5万円、年150万円の改善余地が見えます。
現場感覚として、この差はかなり大きいです。
しかも、この改善は必ずしも賃下げを意味しません。
予約の詰め方を整えてアイドルタイムを減らす、アシスタント業務の分担を見直す、店販や上位メニューで客単価を上げるといった工夫で、同じ人数でも人時売上を伸ばすことで達成できるケースが多いです。

美容室では、固定費の見直しをする際に、掲載料や予約システムの月額に目が向きがちですが、本当に大きいのは人的稼働の設計です。
予約の谷間が多い店舗では、スタッフが暇なのに人件費だけ固定で出ていく状態になりやすいです。
反対に、予約導線が整っていて施術メニューの構成が良い店舗は、同じ人数でも売上密度が高くなります。
筆者の経験上、カット、カラー、トリートメントの組み合わせ提案が自然にできている店舗ほど、客単価と人時売上の両方が改善しやすく、人件費率も落ち着きやすいです。

この業種では、スタイリストの採用維持に必要な報酬や教育コストは「外せない費用」です。
一方で、固定シフトの組み方、空き時間の発生、歩合の閾値設計、店販を含めた評価基準は代替や再設計がしやすい費用です。
美容室の固定費管理は、コストカットというより、稼働と報酬をどう連動させるかの設計問題として捉えると実務に落とし込みやすくなります。

小売店:賃料と決済・在庫管理コストの最適化

小売店は、飲食店ほど光熱費が大きくなく、美容室ほど人件費比率が支配的でもないぶん、賃料と決済・在庫管理まわりの固定費がじわじわ積み上がるのが特徴です。
特に、商業施設内や人通りのある立地では賃料負担が重くなりやすく、そこにPOS、在庫管理、予約、分析、会計連携などのSaaSが増えると、毎月の固定支出が見えにくく膨らみます。

小売店で見落とされやすいのは、費用が小粒に見える月額サービスの重複です。
現場では、POSはPOS、在庫は在庫、顧客管理は別、販促分析も別という形で積み上がり、誰も全体額を把握していないことがよくあります。
筆者がよく見るのは、単一店舗でもPOS・在庫・予約・解析のSaaSを統合したことで、月6万円かかっていた構成が月3.5万円程度まで整理できたというケースです。
ひとつひとつは大きくなくても、年額で見ると差は無視できません。

また、小売店ではキャッシュレス比率が上がるほど、決済関連コストの見方も重要になります。
決済手数料そのものは売上連動なので固定費ではありませんが、決済端末まわりの月額、連携システム費、POSとの二重契約などは固定的に残りやすいです。
すでに触れた通り、決済手数料率の相場観を持ちながら、率だけでなく周辺固定費まで含めて見るのが小売店らしい視点です。
3年、5年と使う前提なら、単月の安さより、機能重複の少ない構成のほうが結果として利益を残しやすくなります。

もう一つ、小売店では在庫管理コストを固定費の外側に置いてしまうことがありますが、実務ではかなり密接です。
在庫が多すぎると、保管スペース、棚卸し作業、値引き処分、発注確認などの手間が増え、売場の生産性も落ちます。
逆に、在庫回転が良く、棚割りが整理されている店舗は、同じ面積でも売上効率が高くなります。
つまり、賃料を下げられなくても、1坪あたりでどれだけ売れるかを改善できれば、固定費負担の見え方は変わってきます。

小売店で外せない費用は、売上を支える立地の賃料や、日々の販売に不可欠な基幹システムです。
一方で、機能が重複したSaaS、使われていない分析ツール、実態に合わない在庫点数、売れ筋に合っていない棚割りは代替可能な費用です。
tenpo-keieiの現場で横断的に見ていると、業種ごとに削るべき費目は違っても、利益改善の考え方は共通しています。外せない費用は守り、代替可能な費用は統合する
この仕分けができる店舗ほど、固定費の見直しが単発で終わらず、利益体質の改善につながります。

固定費を下げる手順|30分でできる見直しチェック

Step1 準備:明細と請求書を集める

最初の10分は、判断材料を一か所に集める作業です。
ここで必要なのは、直近3か月の試算表、通帳、カード明細、そして主要な請求書です。
試算表は損益の全体像を見るため、通帳とカード明細は「試算表に出てこない細かな定額支出」を拾うために使います。
実務では、会計上の科目名だけ見ていると、店舗名義で契約したサブスクやオプション料金が埋もれてしまうことが少なくありません。

この段階では、細かい評価はまだ不要です。
まずは、毎月または定期的に引き落とされているものを一覧にします。
家賃、共益費、固定シフトを含む人件費、リース料、保険料、通信費、POSや予約システムなどのSaaS、電気やガスの基本料金、清掃や保守の定期契約など、「止めない限り出ていくお金」を並べる感覚で十分です。
店舗名義のサブスク一覧を同時に作っておくと、あとで重複機能の整理がしやすくなります。

筆者が現場で見てきた範囲でも、最初のつまずきは「何に払っているかを誰も全部は把握していない」ことです。
特にカード決済の明細には、少額の月額課金が混ざりやすく、現場責任者が入れたツールと本部側で契約したツールが二重になっていることがあります。
数字は経営の健康診断ですから、診断の前に検査データを揃える、この順番が大切です。

Step2 分類:10項目と更新条件を整理

次の10分では、集めた支出を固定費の10項目に振り分けていきます。
前述の分類表に沿って、各費用について月額と年額を書き込み、あわせて更新日、最低利用期間、違約金の有無をメモします。
固定費の見直しは「高いか安いか」だけでは進みません。
いつ動けるか、動いたときに追加コストが出るかまで整理して、はじめて実行可能性が見えてきます。

ここで重要なのは、金額だけで終わらせないことです。
たとえば通信費なら、回線本体の料金に加えて不要なオプションが付いていないかを見ます。
SaaSなら、予約、顧客管理、会計連携、分析などの機能が他サービスと重複していないかを確認します。
リース料や保守契約は、満了日が近いかどうかで打ち手が変わりますし、保険料も補償の重なりがあれば整理余地が出てきます。

この分類作業では、固定費を「見直しやすいもの」と「すぐは動かしにくいもの」に分けて眺めると効率が上がります。
一般に、通信費やSaaSは見直しやすく、光熱費は運用改善で中程度の調整がしやすい一方、家賃や人件費は金額インパクトが大きくても着手難易度は高めです。
だからこそ、低難度の項目を先に可視化しておくと、短期で成果を出しやすくなります。

TIP

表を埋めるときは、金額順ではなく「毎月必ず出るものから順に」記入すると漏れが減ります。実務ではこの順番のほうが、カード明細に埋もれた少額課金を拾いやすいです。

Step3 判定:売上比で並べる

5分で行う判定の要点は、固定費を絶対額ではなく売上比で見ることです。
月額を一覧にしたら、売上に対して何%なのかを並べます。
これをやるだけで、「高い気がする」という感覚論が、「どの費目が重いのか」という数字の議論に変わります。

目安としては、ビズキューブが示す水準では家賃は売上の10%以下、水道光熱費も10%以下がひとつの基準です。
人件費は業種差が大きく、飲食業は30〜40%、サービス業は40〜60%、小売業は10〜30%が一般的な目安とされています。
ここがポイントで、目安は合否判定ではなく、過不足に気づくための物差しです。
家賃が基準内でも、SaaSや通信費が積み上がって固定費全体を圧迫している店舗は珍しくありません。

売上比で並べるときは、費用の大きい順だけでなく、「削りやすい順」でも見てください。
家賃や固定人件費は重くてもすぐに動かしにくい一方、通信費、SaaS、保守契約の一部は動かしやすく、短期の成果に結びつきやすいからです。
筆者はこの場面で、インパクトと実行難易度を頭の中で掛け合わせて優先順位を見ます。
大きいけれど時間がかかる費用と、中くらいでも今月動ける費用は、同じ土俵で評価しないほうが現実的です。

Step4 決定:4区分と期限設定

残りの5分で、各費用を「解約」「交渉」「切替」「保留」の4区分に振り分けます。
ここまでできると、見直しが単なる棚卸しで終わらず、実行計画になります。
使っていない、または重複しているものは解約候補です。
契約は必要でも条件改善の余地があるものは交渉、機能は必要だが今の契約が割高なものは切替、重要性が高く現時点で動かしにくいものは保留に置きます。

このとき、各項目に担当者と期限も入れておきます。
期限は「今月中」「来月まで」のように短く区切るのが実務向きです。
担当者が曖昧だと誰も動かず、期限が遠いと固定費の見直しはほぼ止まります。
筆者の経験では、30分の初回チェックをしたら、その場で翌週に交渉と切替の実行フェーズ会議を入れてしまう店舗のほうが、停滞せず成果につながりやすいです。
可視化と実行の間が空くと、日々の営業に押されて優先順位が下がりやすいからです。

特に、交渉と切替は「調べてから」「時間ができたら」と後回しになりがちです。
そこで、家賃や保守契約は誰が契約書を確認するのか、通信費やSaaSは誰が代替案を比較するのかまで決めておくと、次の一手が明確になります。
固定費の見直しは、良い案を考えることより、期限付きの実行に落とすことのほうが結果を左右します。

モデル店の年額インパクト試算

たとえば、月商300万円の飲食店をモデルにすると、固定費の見直し余地はかなり具体的に見えてきます。
通信費が月1.5万円から0.9万円になれば、差額は月0.6万円、年7.2万円です。
SaaSが月2.8万円から1.5万円に整理できれば、差額は月1.3万円、年15.6万円になります。
さらに、空調設定の見直しで電気代を月2万円下げられれば、年24万円です。

この3項目だけでも、合計で年46.8万円の改善余地になります。
月次では小さく見えても、固定費は一度下がると効果が積み上がるので、年額で見ると利益への寄与は大きくなります。
特に通信費やSaaSのような「中規模だが動かしやすい費用」は、初回の見直し対象として扱いやすいです。

一方で、家賃や人件費のように金額インパクトが大きい項目は、同じ30分でも「すぐ削る」のではなく、交渉余地や配置見直しの準備に回したほうが現実的です。
短時間のチェックでは、まず今月動ける費目を拾い、次に大きな費用の準備に入る。
この順番で進めると、現場の負担を増やしすぎず、利益改善を前に進めやすくなります。

やってはいけない固定費削減

人件費の乱暴な圧縮はNG

固定費の中でも人件費は金額インパクトが大きいため、真っ先に削りたくなる項目です。
ただ、ここを突然のシフト削減、説明のない給与カット、違法な契約変更のような形で動かすと、短期の節約以上に大きな損失を招きます。
現場では、接客品質の低下、提供スピードの悪化、クレーム増加、退職連鎖が同時に起こりやすく、数字で見ると人件費が下がっても売上やリピート率の悪化で利益が傷みます。

よくある誤解なのですが、「人件費率が高いから、すぐ人数を減らせばよい」という発想は危険です。
前述の通り、人件費には業種ごとの目安がありますが、問題は総額だけではなく中身です。
必要な時間帯に必要な人数が入っているか、固定シフトが過剰なのか、教育不足で一人当たりの生産性が落ちているのかで、打ち手は大きく変わります。
乱暴に切るのではなく、配置と役割の再設計で整えるほうが、現場への傷が小さく済みます。

特に避けたいのが、残業代の不払い、書面を伴わない労働条件の変更、最低賃金を意識しない時給設定です。
こうした見直しは、単なるコスト削減ではなく労務トラブルに直結します。
筆者の支援現場でも、固定費を下げたい一心で契約を急に変え、退職と採用難が重なって、かえって教育コストが増えたケースを見てきました。
人件費は削減対象というより、法令を守りながら最適化する対象と捉えるほうが実務的です。
労働法令に触れる変更は、社労士に整理してもらいながら進めるのが安全です。

空調・照明の過度な節約は危険

水道光熱費は見直しやすい固定費ですが、やり方を誤ると顧客満足と安全衛生を同時に損ねます。
典型例が、真夏や真冬に空調を切りすぎる、客席や作業場の照明を必要以上に落とす、といった節約です。
店内が暑い、寒い、暗いという不快感は、来店中の滞在時間や再来店意欲にそのまま響きます。
飲食店なら、空調停止による居心地の悪さが客単価や回転にも悪影響を与えやすいです。

照明も同じです。
経済産業省の節電資料では、作業内容に応じた照度の目安として、精密作業は300Lx、普通作業は150Lx、粗な作業は70Lxという参考値が示されています。
つまり、ただ間引けばよいのではなく、どの場所で何の作業をしているかで判断しなければいけません。
レジ周り、厨房の包丁作業、バックヤードの検品などは、暗さがミスや事故につながります。

安全衛生を無視した節電も避けたいところです。
スタッフが汗だくになる厨房、換気が不十分な作業場、見えにくい床や段差は、体調不良や転倒リスクを高めます。
食品を扱う業態では、温度管理や衛生状態への影響も無視できません。
節約の方向としては、停止ではなく運用改善や設備更新のほうが筋が良いです。
快適性と衛生を守りながら下げる、ここがポイントです。

TIP

光熱費の見直しは「止める」より「無駄な稼働を減らす」と考えると失敗しにくいです。
客席が埋まる時間帯と空調設定、使っていない区画の照明、開店前後の立ち上げ時間を分けて見るだけでも、現場を傷めずに改善余地が見えます。

SaaS解約での機能喪失リスク

通信費やSaaSは手を付けやすい一方で、必要機能まで一緒に切ってしまう失敗が起こりやすい項目です。
予約、在庫、会計、顧客管理のような基幹領域は、月額だけ見て解約すると、業務そのものが止まります。
特に、ひとつのサービスに複数機能がまとまっている場合、不要に見えた契約が実は現場の流れを支えていた、ということは珍しくありません。

筆者の現場感でも、SaaS解約の判断を急いだ結果、予約データの一部が欠けたまま切り替えに入ってしまい、繁忙期の予約確認が混乱したケースがありました。
スタッフは紙と口頭での確認に追われ、二重予約の調整で現場が疲弊しました。
月額の削減額だけを見れば正しい判断に見えても、売上機会の損失やオペレーション混乱まで含めると、高い授業料になりやすいです。

この領域では、代替ツールの試用、データ移行テスト、切替当日のダウンタイム計画が欠かせません。
予約システムなら予約台帳の見え方、在庫管理なら連携先との整合、会計クラウドなら締め処理や仕訳連携まで見ておかないと、解約後に気づいても戻しづらいです。
削るべきなのは重複機能や使っていないオプションであって、日々の業務を支える中核機能ではありません。

契約確認なしの解約は避ける

固定費削減では、費用項目より先に契約条件が壁になることがあります。
月額が高いから解約しよう、条件交渉をしようと思っても、更新時期、自動更新の有無、解約予告期間、違約金の定めを確認しないまま動くと、期待したほど下がらないどころか余計な費用が発生します。
家賃、リース、保守契約、SaaS、掲載サービスは、どれもこの落とし穴があります。

特に店舗では、現場責任者が利用していても契約書は本部やオーナー管理というケースが多く、実際の利用感と契約上の扱いがずれていることがあります。
そのため、先にベンダーへ口頭で解約を伝えたり、貸主側に強い言い方で交渉したりすると、話がこじれやすいです。
実務では、契約書、更新条件、違約金、原状回復や返却物の有無まで整理してから進めるほうが、結果として早く着地します。

法的・契約的な扱いは、一般論だけで片付けないことも重要です。
不動産会社との賃貸条件、各サービスの利用規約、行政窓口の運用は、書類の文言で判断が変わる場面があります。
数字は経営の健康診断ですが、契約はその数字の前提条件です。
固定費削減を急ぐときほど、契約の読み飛ばしが高くつきます。

保険の見直しは補償とリスクの両面で

保険料も固定費の見直し対象ですが、安易な減額や解約はおすすめできない項目です。
毎月の支払いだけを見ると削減余地に見えても、事故、賠償、設備トラブル、休業といった万一の局面では、補償の有無が資金繰りを大きく左右します。
特に店舗は、来店客、従業員、設備、在庫など守る対象が多く、保険を薄くしすぎると一度の事故で経営が揺らぎます。

見直しの視点は、契約数を減らすことよりも、補償範囲の重複や不足を整えることです。
同じような補償が重なっていれば整理余地がありますし、逆に業務形態が変わっているのに契約内容が昔のままなら、必要な場面で使えないおそれがあります。
たとえば、店内飲食中心からテイクアウト比率が高まった、施術内容が変わった、設備を入れ替えたといった変化は、保険の設計にも影響します。

筆者は固定費改善の相談で、保険を「削るか維持するか」の二択で考えないようにお伝えしています。
保険はコストであると同時に、損失の上限を決める仕組みでもあります。
固定費を下げる目的は、経営を軽くしながら持続性を高めることです。
補償範囲、免責の考え方、今の営業実態との整合を見ながら整えるほうが、数字にも経営にも無理が出にくいです。

まとめ|固定費削減は金額×継続性で決める

固定費削減は、安いものから切るより、毎月どれだけ残り続けるかで決めるのが実務的です。
判断軸は、削減額と継続性に、品質や安全を損なわないかという事業影響を掛け合わせることです。
筆者の現場感では、まずは1項目だけ完了させると動きが軽くなり、その勢いで次の見直しにも進みやすくなります。
今月は解約・交渉・切替の中から1〜3件だけ選び、実行日と担当を決めて着手してください。
税務・労務・契約に関わる判断は、必ず専門家や管轄窓口で最新の扱いを確認しながら進めるのが安全です。

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藤本 健太郎

中小企業診断士として小規模店舗の経営改善を15年間支援。元地方銀行の融資担当で財務分析に精通し、損益分岐点分析から人材定着まで年間30店舗以上の経営相談を受けています。